第1話特別企画室の任務
2023.01.10 SEASON 1 9時半を迎えたころ、俺は特別企画室にいた。
ここは、新しく立ち上げたプロジェクトの販売企画を行う本部である。メンバーは3人という少数精鋭。部長は俺!
連絡事項の確認をしている最中、「重要」と書かれた上司からのメッセージが新しく飛んできた。
俺は、パソコンの画面に「は?」と圧をかける。
「売上目標、1万個〜? まだ20個しか売れてねえのに? 4ヶ月で1万個は鬼じゃね」
「それほど社運をかけてるんじゃないの。で、どうする炉輝氏。今のままじゃ無理だよね」
パソコンモニターに邪魔されていて顔は見えないが、
わかってる。今のままじゃ無理だし、無理ってことはつまりこの企画室が解体になってプロジェクト終了まである。
困る。
俺たちはすごく困っているというのに、社内放送である「金曜朝ラジオ」に意識を乱される。この企画室のメンバーでもあるルロンが担当している、広報部の取り組みだ。
俺の焦りとは正反対に、陽気な感じだった。
『以上、総務部の橋本さんからのお便りでした。今ハマっているアニメを紹介してくれましたね。私はあまりアニメや漫画に触れない方なのですが、こうしてすすめられるとすこし興味が湧きます。社員のみなさん、仕事以外の趣味のお便りでも大歓迎ですよ』
入社するまではファッションモデルとしてタレント業をしていたルロンが、ハキハキと流暢に喋っていた。女性社員に人気らしい。なら、その魅力で女性にもっと営業して売ってくれよと思ったり思わなかったり。
ラジオを終えたルロンが戻ってきたとき、俺と冴深は無言だった。
「わっ、暗い〜。どうしたの。オレは朝から頑張ってきたっていうのに」
まあまあ見てくれよ。ルロンに数字を提示すると、彼を纏っている花が萎れた。今日はアサガオだったから、時間的に萎れるタイミングだっただけかもしれない。
俺たちは宇宙人で、3人がそれぞれ特殊能力を持っていて、花を咲かせるとか擬態ができるとかを生かして地球侵略のためにスパイをしていたわけなのだが、なぜか今、地球人を健康にするためのものを売っている。