きみとコスモ

STORY

第1話特別企画室の任務

2023.01.10 SEASON 1

Chapter:宗谷(そうや)炉輝(ろき)

 クロスバイクに乗って出勤する、朝の清々しさが大好きだ。でも住宅街から都心に入った瞬間に空気がよどむ。高架下の幹線道路は、太陽の光も入らないし排気ガスがすごい。
早くここを抜けてえな〜と考えながらシャカシャカ車輪をまわしていたら、並走していた車から腕が出てきた。意識が持っていかれる。
左ハンドルの運転席の窓から出た腕は、ぷよっとしていた。その手のひらから解き放たれた半透明の物体が、風とともに俺の後ろに飛んでいく。堂々とポイ捨てしてんじゃねーよ。
正義感が強い。と自分で認識したことはないけれど、まわりの人間にはそう言われるんだからそうなんだろうな。
わざわざ戻ったし降りたし拾った。コンビニのサンドイッチの外装だった。マカロニサラダサンドイッチマヨネーズ増量中。
そんで、青信号続きの道路を車より速く駆け抜ける。

「おらあ! そこの白い車ーっ!」

ビニールを持ちながらハンドルを握ったので、マヨネーズの油のせいでぬるっとした。
進行方向の信号が青から黄色に変わるのが見えた。あの車は白線を越えるか、越えないか。
越えなかった。
左右のブレーキを力いっぱい握る。隣に並べたので、窓をノックする。

「おっさん、ポイ捨てはだめだろ。法律違反でもあるし、これビニールだぞ。土に還ら
ねえぞ」

普段から声は大きい方だ。だからわざとそうしたつもりはないが、目の前の横断歩道を渡る人間たちが道すがらに俺らを見ている。
おっさんは、嫌そ〜〜〜な顔をしながら窓を開けて素早く受け取り、また窓をせりあげていく。
車道の信号が、赤から青に変わった。

「朝飯食うのはいいことだが、メニューに気をつけろよ! 栄養足りねえぞ〜!」

車を追いかけるようにして俺も発進。いや、まだ言い足りねえな。

「ビタミン入りのプロテインもいいぞ〜!」

マカロニサラダに恨みがあるわけじゃないが、野菜の恩恵は少ないしサラダと名乗れるものではないような気がしている。炭水化物は安くて腹持ちがいいのもわかる。しかしたんぱく質が足りないよなあ。
俺は朝からプロテインだぞ。

プロテインといえば、最近では自分の筋力のことより仕事のことが連想されてしまう。
勤めている健康食品会社で新しく企画したプロテイン商品が、思うように売れない。インターネット販売の難しさに直面している。
だって俺は、「プロテインは必要ない」と思う人のことがわからん。

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