きみとコスモ

STORY

第2話ピンクのハートのUSB

2023.01.10 SEASON 1

“地球外生命体”と書かれたTシャツにパーカーを羽織って、僕の桃源郷を離脱した。
 該当の公園のある地域のごみ回収日は金曜の朝だ。すでに回収されているならごみは処理場にあるはず……。燃えるごみで出したのか燃えないごみで出したのかは賭けだけど。

 住宅街から離れたごみ処理場では、夜でも作業が続いていた。
 ちょっと覗いて、働いている人の顔と身体を観察する。僕のスーパー特殊能力、擬態! 僕とだいたい同じくらい体積の生物なら、完璧なまでに模倣することができるのだ〜!

「はぁ……まったくもって僕に合ってない能力だよ」

 擬態できたところで僕のコミュ力は底辺なんだから。心までコピーできるわけじゃないんだよ。
 もうひとつの能力、無機物を変化させるのは気に入ってるけどさ。

 とにかく作業員として入り込み、あまり人と目を合わせないようにして施設内を探した。
 見渡す限りごみの山。生ごみの匂いがずっとどこに行っても微かに漂っている。
フードロスとかダイオキシンとか、いろんなワードが思いついてしまった。
 僕は小さいころから地球にいるけど……こういうのは社会科見学で見ておくべきだったんじゃないの? と思うのだった。

「いくら地球の焼却能力が上がっているとて、これぜんぶ処理するといろいろだめだよね……バッドギャンプに乗っ取られる前に地球が勝手に廃れていったらどーすんだろね」

 ほかの作業員にお疲れさまですと声をかけられれば「あっす」と、ちゃんと返す。
 手探りでごみをかき分ける仕事なんて実際あるのかどうか知らない。とりあえず怪しまれなかった。
 それはよかったんだけど、お目当てのものは見つからない。

「結局僕もフィジカルで草」

 朝になって作業所に活気が出てくる前に逃げた。成果はないけど、やれることはやったぞ。
 上官へ連絡をするのを忘れていたなあ。でも一夜漬けで公園探すなんてしてないだろうなあ、炉輝氏もルロン氏も健康おばけだから。
 とにかく出かける予定まですこしでも寝たい。家に帰らなければ……と思いつつも
コンビニで栄養ドリンクを買って飲んだ。

 イートインコーナーで、寝落ちた。
 起きたときには朝9時とか。栄養ドリンクの瓶と朝チュンした僕は、ガラス張りの向こう側で浮かれる人間たちを見て、脳幹を起こしていく。
 なんたって今日は土曜日だ。みんな、楽しい予定があるのかな。

「家で寝たかった……ぐう、だがしかし家に帰る時間はないしこのまま直行するしかない。僕末期乙」

 ふと、ヨドンヨルスが目に入る。
 歩道を進むざわざわした粒子が、一人の女の子に寄生していた。あんな小さい子にも寄生してんすか……いよいよ地球はやばいのでは……。

「ん?」

 目で追っていた女の子はスケルトンのリュックを背負っていて、それには人型のぬいぐるみが詰まっていた。自分の好きなものを周囲にアピールできる純粋さが眩しいですな。
 じゃなくて! 外ポケットのジップに、ピンクのハート! ハコっていうストラップ付き!

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