第4話フィジカルスーパーマン!
2023.01.10 SEASON 1Chapter:
ルロンに渡したらしい。ルロンとはもう音信不通。俺は公園で腕を組んでいた。
情報が錯綜しすぎだろ。
テレパス信号は半径2キロくらいしか繋がんねえの、まじで不便だからどうにかしたい。
「よし、行くか」
屈伸をした。足の筋肉を伸ばし、助力する。
意気込みとともに公園を瞬時に離れ、世界記録もびっくりの速さで晴海に向かう!
オレの特殊能力は冴深いわくスーパーフィジカルだが、電車をつかうよりも時短なんだよ。
一目散にルロンを目指し、晴海のイベントホールの外周からテレパス信号を発する。反応があった場所では、貴族の2人が優雅に化粧をしていた。
ルロンの薔薇が舞っていて、そこだけ異空間みたいだ。
「おっ、すげえな。似合うぞ」
俺を視認したルロンが軽く吹き出した。
外交用のしゃきしゃきした感じがすこしゆるくなっていたので、その女の子と随分仲良くなったんだなあと思う。
「炉輝のそういう戸惑わないところ、好きですよ」
「で、USBは」
「はい。即売会は11時だそうです。あと30分ですね」
「サンキュ! 王子と姫はゆっくり楽しんでな!」
「王子じゃないです」「姫じゃないです」と、2人の声を背中にもらったけど、
そこは知らねえから許してくれよ。
もう筋肉を特別仕様にすることはできない。人で溢れる会場内に入れば、東のCという区域を目指して、通常の人間と同じように焦った。
列。そして人の輪。ピンクのハートを握りしめた手には汗をかいた。
「あった!」
イベントホールの奥の方だった。長机をいくつか並べてつなげた島の一番端の、誕生日席みたいな小さめの机に東C-11と書いた紙が貼り付けてある。
机に置かれている漫画は、ルロンたちが着ていた服みたいなテイストのやつ。
「えっ、漫画家だったんか! すげえ! 絵うまいなあ!」
ハート型のUSBを突き出しながら言うと、近くのブースの人たちも一気に俺を見た。
声でかかったか。すまん。