第2話ピンクのハートのUSB
2023.01.10 SEASON 1 「あえっと、僕も今からそこに行く……」
「そうなの!? お兄さんもデキャンタヘラクレスのファンなの!?」
「な、なに? デキャ……?」
本日、晴海で行われるイベントは、そういうネット上の有名人や漫画家などがブースを出してグッズを売ったり本を売ったり、企業ブースではゲーム大会が行われたりする、
つまりオタクの祭典である。
僕は昼に行われるeスポーツのプロの人の公開配信とSF漫画家の即売会に用がある。
「今日のイベントはその人だけのものじゃないですぞ! ほかにもたくさんすごい人たちが来るんだが……幼き少女はよく知らないかもしれませんが、楽しみにしてる人は多いはず。僕はゲーム実況者の仏陀さんの生捌きを見に行くのですが!」
「じゃあ一緒に行こ!」
「嫌だ捕まるから」
「なんで?」
「幼女とおじさんはダメですな。ほかを当たってくれさい」
「幼女じゃないもん! でもママに許可取ればいいんでしょ? テレビ電話しよ〜」
5分後の僕は、画面越しでママさんに名刺を見せて自己防衛をしていた。そして、
美殊さんの同伴者としての責任を負ってしまった……。
「美殊さんのママさんはすこし放任すぎるよ。危ないと思ってたんです〜ありがとうございます〜じゃないよ……」
「ママ忙しいからね。夕方くらいにお姉ちゃんが迎えにきてくれるから、それまでお願いね。あと、美殊の護衛を果たしたらこのストラップあげるよ? ほしいんでしょ?」
「ほしい」
電車内で、僕はずっと美殊さんの”デキャヘラ”愛を聞いていた。激辛大食い系の配信者だそうだ。120キロ級のね……。
道中、僕のスマホに炉輝から連絡が入る。
『USB見つけたら晴海のホールまでよろしく』ということは、このすぐそこで揺れているピンクのハートの中身は、もしや何かしらの制作物ではなかろうか?
あ。やる気ゲージがカンストしそう。
これ、きっと頑張ってつくったものなんだね。ちゃんと届けてあげたい。