第7話推し活は心のビタミン剤
2023.01.10 SEASON 1 何度見ても売り上げグラフがぐんと急角度で、傾斜をつけている。マウスを何度もクリックしてページ更新をしまくった。表示しなおしてもやっぱりそうだ。
なんで。急に。どこから?
「あっ」
ユーザーがどこから来たのかを調べると、たどり着いたのは葉胡のムイッターだった。
自分の絵柄で、かわいく、オタクと健康についてのエッセイ漫画を投稿している。
「本当の健康はお金で買えない」「長くオタクをしたいから」と、”ぷろて日和”のおいしさと成分情報とともに、数ページをつかって発信してくれていた。
ボーカロイド曲の世界観みたいなものは一切なく、葉胡オリジナルのエッセイ漫画みたいになっていた。やたらと拡散されているし、反響もあるんだろう。
「お礼の比率がデカすぎる……」
彼女が書いた、オタク女子の心理面をたくさん読み解いた。
楽しい、生きがい、身を捧げる趣味。そういうのを長く続けるためには、自分を保ち続けていないといけないよな。
どこまで本気で書いてくれているのかはわからないけど、俺に協力してくれていることだけはわかった。ちゃんと「初回注文なら割引クーポンも発行される」というところまで宣伝してくれちゃってさ。
「できた」冴深が控えめに呟く。
同時に「何かご用件があればどうぞ」と、ぬいぐるみが喋り出した。柔らかいままの個体に電子機能が付くのは、いくら俺たちと言えど不可思議である。
「キエエエ、シャベッタアア! 声がちょっと解釈違い!」
「冴深が自分でやったんじゃない」
「そうだけど……」
犬こうを持ち上げてみる。もふもふした。
「冴深、こいつ自社サーバーにも繋がってるよな?」
「そりゃあ、もちろん……」
「犬! 先週の”ぷろて日和”の売上個数は?」
「先週の”ぷろて日和”の売上個数は、150です。前週の750%です」
売上1万個まではまだ遠いが、確実に一歩ずつ近づいている。
そして、わずかながらにもヨドンヨルスの撃退もできているはず。
さあ、これからまた忙しくなるぞ〜! というとき、犬こうをつくり終わってもパソコンをカタカタ続けていた冴深が叫び出した。
「あのキラキラ物質! 楽しいことをしているときに出るものだったんですけど、いや大事なのはそこじゃなくて!」
「ん?」
「ヨドンヨルスどころかバッドギャンプ星の地質自体を消滅させる力がある……かも……!」
「マジかよ」
つまり、オタク女子たちの健康を守って、「楽しい!」「好き!」をめちゃくちゃたくさん集めれば、俺らの宇宙が救われるってことじゃねえか。
To be continue